反強磁性相関によって磁場の影響を受けにくい超伝導

 一般に、超伝導状態が温度や磁場の増加に対してどれくらい安定なのかは、単純に1つの超伝導秩序変数の性質によって決まっています。しかし、CeCo(In1-xZnx)5が示す非常に 大きいパウリ常磁性効果をもつ超伝導秩序では、そのような期待に反した性質を持っています。私たちの最近の研究では、超伝導体CeCoIn5にZnを5%混入すると、超伝導転移温度 Tcは元の大きさに対し80%まで減少しますが、それに対し超伝導上部臨界磁場Hc2はほとんど変化しないことが明らかになりました。このような異常な超伝導物性を理解する鍵は、 CeCo(In1-xZnx)5に存在する反強磁性相関にあります。つまり、CeCoIn5にZnを混入すると反強磁性相関が増大し、それがパウリ常磁性効果を緩和させます。すると、その効果とZn混入による超伝導凝縮エネルギーの減少の効果がちょうどつり合い、超伝導上部臨界磁場 の大きさがZn混入によってほとんど変化しなくなるのです。

 これらの研究成果は、アメリカ物理学会が発行するPhysical Review B誌に以下の論文として掲載されました。


M. Yokoyama, H. Mashiko, R. Otaka, Y. Sakon, K. Fujimura, K. Tenya, A. Kondo, K. Kindo, Y. Ikeda, H. Yoshizawa, Y. Shimizu, Y. Kono, and T. Sakakibara:
"Pauli-limited superconductivity and antiferromagnetism in the heavy-fermion compound CeCo(In1-xZnx)5",
Physical Review B 92, 184509-1-9 (2015).

* 下線は研究室所属メンバー

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