重い電子系超伝導体CeCoIn5は、超伝導の上部臨界磁場Hc2近傍の磁場領域において、各物理量に量子臨界揺らぎに起因する異常がみられます。しかし、量子臨界揺らぎの原因となる秩序変数が不明であるため、その起源は未解明です。今回、私たちは亜鉛(Zn)を混入したCeCoIn5においてはじめて、新たな磁場誘起反強磁性秩序相やその量子臨界揺らぎを発見しました。特に、比熱にみられる量子臨界揺らぎに対して行ったスケーリング解析によれば、Znを混入した系と混入していない系でみられる量子臨界揺らぎはほぼ同一の起源によるものであることが示唆されます。つまり、CeCoIn5のHc2近傍でみられる量子臨界揺らぎは、Znを混入した系で観測された磁場誘起反強磁性秩序相と同等な性質を持つ「隠れた」秩序変数に起因することが期待されます。
これらの研究成果は、アメリカ物理学会が発行するPhysical Review B誌に以下の論文として出版されました。
M. Yokoyama, H. Mashiko, R. Otaka, Y. Oshima, K. Suzuki, K. Tenya, Y. Shimizu, A. Nakamura, D. Aoki, A. Kondo, K. Kindo, S. Nakamura, T. Sakakibara:
"Observation of a new field-induced phase transition and its concomitant quantum critical fluctuations in CeCo(In1-xZnx)5",
Physical Review B 95, 224425-1-5 (2017).
* 下線は研究室所属メンバー
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