遍歴強磁性の量子臨界性を回避して現れる磁気ナノクラスターグラス状態

 遍歴強磁性体 SrRuO3 に異なるイオンを混入した化合物は、遍歴強磁性を引き起こす電子状態とその量子臨界現象の性質を、包括的に理解する上で適した系として、精力的に研究されています。特に、SrRuO3のストロンチウム(Sr)原子をカルシウム(Ca)原子に置換した系では、強磁性が抑制されるとともに、その量子臨界揺らぎが発現することが知られています。今回、私たちはストロンチウム原子にランタン(La)原子とカリウム(K)原子を等量置換した系 Sr1-x(La0.5K0.5)xRuO3 の磁気的・熱的性質を調べました。この系は SrRuO3 にカルシウム原子を添加した系とは異なり、強磁性が消失するとともに量子臨界揺らぎはほとんど発現せず、代わりに磁気ナノクラスターグラス状態が発現することを明らかにしました。強磁性が消失する際に、磁性を担う電子スピンの挙動がこれらのイオン置換系の間で異なる理由として、イオン置換に伴う局所的に相関を持った乱れと、極端に小さい伝導電子の平均自由行程の両方の効果が考えられます。

 これらの研究成果は、アメリカ物理学会が発行するPhysical Review Materials誌に以下の論文として出版されました。

R. Iwahara, R. Sugawara, Rahmanto, Y. Honma, K. Matsuoka, A. Matsuo, K. Kindo, K. Tenya, and M. Yokoyama:
"Avoided quantum criticality and cluster-glass formation in itinerant ferromagnet Sr1-x(La0.5K0.5)xRuO3",
Physical Review Materials 4, 074404-1-8 (2020).

* 下線は研究室所属メンバー

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